【裁判事例集】逮捕歴やツイート炎上等のデジタルタトゥー削除に関する判決や法改正

    【裁判事例集】逮捕歴やツイート炎上等のデジタルタトゥー削除に関する判決や法改正

    逮捕されたりTwitterが炎上したりすると、デジタルタトゥーとしてインターネット上に事件の履歴が残り続けます。

    デジタルタトゥーとは

    デジタル(digital)とタトゥー(tatoo)を組み合わせた造語。インターネット上に残り続ける過去の事件情報や画像などの不名誉な情報が半永久的にインターネット上に残り続けることを指します。

    デジタルタトゥーによって社会復帰が阻まれたり精神的な苦痛を感じる方が、インターネット上の履歴を削除する裁判を度々起こしています。これらはプライバシー保護の観点から現在進行形(2022/11)で検討されている人権の一つ、忘れられる権利を巡る裁判です。

    忘れられる権利とは

    一般財団法人日本情報経済社会推進協会によると、適切な期間を経た後に、記録にとどめられるべき正当な条件を持たない過去の個人にまつわる情報がWeb上に残っている場合、これを削除すること、検索結果によって表示されないことを求める個人の権利の1つとして提唱したもの。

    この記事では「逮捕歴やツイート炎上等のデジタルタトゥー削除に関する判決」の要点とニュース記事をまとめたものとなります。

    裁判事例集

    “逮捕記事に地番掲載” プライバシー侵害認めず 高裁判決確定

    判決日:2022年11月26日

    要点

    • 覚せい剤取締法違反で逮捕されたけど、不起訴になった。
    • 静岡新聞の記事で自宅の住所を地番まで掲載された。
    • 1審の静岡地方裁判所はプライバシーの侵害にあたると認めた。
    • 2審の東京高等裁判所はプライバシーの侵害にはあたらないと1審を退けた。
    • 最高裁判所第1小法廷の岡正晶裁判長は上告を退け、プライバシーの侵害にはあたらないとした2審の判決が確定しました。

    結果

    「プライバシー侵害とは認められない」高裁判決が確定した。

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    “逮捕記事に地番掲載” プライバシー侵害認めず 高裁判決確定

    2022年11月26日 12時46分

    覚醒剤取締法違反などの疑いで逮捕され不起訴になった夫婦が、逮捕を報じた静岡新聞の記事で自宅の住所を地番まで掲載され、プライバシーを侵害されたと訴えた裁判で、最高裁判所は夫婦の上告を退け、プライバシーの侵害にはあたらないと判断した2審の判決が確定しました。

    静岡県に住むブラジル国籍の夫婦は、2018年に覚醒剤取締法違反などの疑いで逮捕され、その後不起訴となりましたが、逮捕を報じた静岡新聞の記事で住所を地番まで掲載されたとして新聞社を訴えました。

    1審の静岡地方裁判所は「地番まで掲載する必要性が高いとは言い難い」としてプライバシーの侵害にあたると認め、合わせて60万円余りの賠償を命じました。

    一方、2審の東京高等裁判所は「容疑者を特定することは公共の利害に関わる重要な事柄で、報道される必要性が高く、表現の自由の保障が及ぶ」と指摘したうえで、「記事の掲載当時、容疑者の逮捕を報じる場合に、一律に地番の公表を認めるべきではないという社会的な認識はなく、プライバシーの侵害にはあたらない」として、1審とは逆に訴えを退けました。

    夫婦は上告していましたが、最高裁判所第1小法廷の岡正晶裁判長は、26日までに退ける決定をし、プライバシーの侵害にはあたらないとした2審の判決が確定しました。

    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221126/k10013904241000.html

    逮捕歴ツイート「削除可能」 最高裁が初判断 長期間の閲覧想定せず

    判決日:2022年6月24日

    要点

    • 2012年に建造物侵入の疑いで逮捕された男性は、実名報道を受けた。
    • Twitterで名前や容疑が分かる逮捕時の報道を引用した投稿が閲覧できる状態になってた。
    • 就職活動に支障がでていたので、Twitter社に削除を求めた
    • 1審は削除を認めた一方、2審は削除を認めず上告した。
    • 最高裁判所第2小法廷の草野耕一裁判長は「逮捕から時間が経っているので公益性が小さい」と削除を認めた。
    • 最高裁がTwitter社に削除を命じる初の判決

    結果

    事件から8年が経過し「公益性は小さくなっている」として最高裁で初めてTwitter社に対して削除を命じた。

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    逮捕歴ツイート「削除可能」 最高裁が初判断 長期間の閲覧想定せず

    2022/6/24 15:11
    交流サイト(SNS)のツイッターに過去の犯罪歴を投稿された男性が米ツイッター社に投稿の削除を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(草野耕一裁判長)は24日、「逮捕から時間も経過し、ツイートは長期間閲覧されることを想定していない」などとして、削除を命じる判決を言い渡した。削除を認めなかった2審東京高裁判決を破棄した。同小法廷4人の裁判官全員一致の結論。

    インターネット上に残る逮捕歴の削除を巡っては平成29年、ネット検索大手グーグルの検索結果について最高裁がプライバシー保護が情報提供の理由より「優越することが明らかな場合」に削除できるとした基準を提示。SNSについての最高裁の判断は初めてで、ネット上の「忘れられる権利」が問題となる中、一石を投じる判決になりそうだ。

    平成24年に建造物侵入容疑で逮捕され罰金刑を受けた東北地方の男性が、実名報道されたネット上の記事を引用したツイートが複数投稿され就職活動に支障が出たとして提訴。1、2審ともグーグルについての基準をもとに判断、1審東京地裁は削除を認めていた。

    同小法廷は、逮捕事実を公表されない利益が、ツイートを閲覧し続ける理由に優越する場合には「削除を求めることができる」と指摘。男性が逮捕されてから約8年が経過しており、引用した記事もすでに削除されているとした上で「ツイートは事実を速報する目的で、長期間閲覧され続けることを想定していない」などとして、削除できると結論づけた。

    https://www.sankei.com/article/20220624-6ZQ44CE6SJL3ZHJXFOETLVMCEM/

    最高裁決定「明らか基準」:検索結果の削除に最高裁が初の判断

    判決日:2017年1月31日

    要点

    • 検索結果の提供は検索事業者自身による表現行為であると認めた。
    • その表現行為が社会の情報流通のインフラであり社会的役割を果たしていると認めた。
    • 事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合には、検索事業者に対して削除を求めることができるとした

    結果

    犯罪の種類と事件からの期間では、削除請求は認められなかった。

    裁判例結果詳細を読む

    検索事業者に対し,自己のプライバシーに属する事実を含む記事等が掲載されたウェブサイトのURL並びに当該ウェブサイトの表題及び抜粋を検索結果から削除することを求めることができる場合

    利用者の求めに応じてインターネット上のウェブサイトを検索し,ウェブサイトを識別するための符号であるURLを検索結果として当該利用者に提供する事業者が,ある者に関する条件による検索の求めに応じ,その者のプライバシーに属する事実を含む記事等が掲載されたウェブサイトのURL並びに当該ウェブサイトの表題及び抜粋を検索結果の一部として提供する行為の違法性の有無について,当該事実の性質及び内容,当該URL等が提供されることによって当該事実が伝達される範囲とその者が被る具体的被害の程度,その者の社会的地位や影響力,上記記事等の目的や意義,上記記事等が掲載された時の社会的状況とその後の変化,上記記事等において当該事実を記載する必要性など,当該事実を公表されない法的利益と当該URL等を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量して判断し,当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合には,上記の者は,上記事業者に対し,当該URL等を検索結果から削除することを求めることができる。

    https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86482

    地裁の犯歴削除命令を取り消しグーグル主張認める東京高裁

    判決日:2016年7月13日

    要点

    • 児童買春・児童ポルノ禁止法違反罪で罰金50万円の略式命令が確定した男性がGoogleに対して、検索結果から自身の逮捕に関する情報の削除を求める裁判を起こした。
    • 東京高裁は「男性の犯罪の性質は公共の利害に関わる」などと判断、削除を認めたさいたま地裁決定を取り消した。
    • 児童犯罪の逮捕歴は公共の利害に関わる
    • 時間経過を考慮しても、逮捕情報の公共性は失われていない

    結果

    犯罪の種類と事件からの期間(3年以上)では、削除請求は認められなかった。

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    「忘れられる権利は法的に定められたものではない」… 地裁の犯歴削除命令を取り消し グーグル主張認める 東京高裁

    2016/7/13 07:59

    過去に逮捕歴のある男性が、インターネット検索サイト「グーグル」の検索結果から自身の逮捕に関する情報の削除を米グーグルに求めた仮処分申し立てをめぐり、東京高裁(杉原則彦裁判長)は12日、「男性の犯罪の性質は公共の利害に関わる」などと判断、削除を認めたさいたま地裁決定を取り消した。地裁決定は「忘れられる権利」を国内で初めて認定したが、高裁は「権利は法的に定められたものではない」と判示した。

     申し立てていたのは、児童買春・児童ポルノ禁止法違反罪で罰金50万円の略式命令が確定した男性。事件から3年以上を過ぎても、男性の名前などを検索すると、逮捕時の記事などが表示されていた。

     東京高裁は「プライバシー権などに基づき、特定の検索結果をネット上で閲覧できないようにする請求が認められる場合はある」と前置きした上で、(1)児童犯罪の逮捕歴は公共の利害に関わる(2)時間経過を考慮しても、逮捕情報の公共性は失われていない-などと指摘。さらに、「忘れられる権利」について「法的に定められたものではない上、同権に基づく削除請求は(従来の)プライバシー権に基づく削除請求と変わらない」とした。

    その上で「児童買春は親たちにとって重大な関心事。事件から5年程度たっているが、公共性は失われていない」として削除する必要はないと結論づけた。

     さいたま地裁は昨年6月、男性の申し立てを認める決定をした。決定を不服としたグーグルの異議審で同地裁は昨年12月、「男性には犯罪歴を『忘れられる権利』がある」と異議を棄却していた。仮処分とは別に男性が削除を求めた訴訟は、さいたま地裁で係争中。

     グーグル側は「知る権利と情報へのアクセスを尊重した判断だと考える」と評価するコメントを出した。

    https://www.sankei.com/article/20160713-FL7I4SKUQZIH5NCV5HZMNYVCAY/

    法改正

    改正プロバイダ責任制限法施行 SNS中傷の発信者情報開示を簡便に

    施行日:2022年10月01日

    要点

    • ネット上で誹謗中傷された被害者が、加害者の情報開示請求を簡便に行えるようにする改正プロバイダ責任制限法が10月1日に施行された。
    • 開示請求にはこれまで2段階の裁判手続きが必要だったが、1回の手続き(非訟手続)で可能になる。

    結果

    誹謗中傷被害を受けた時、訴えることが容易になった。

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    改正プロバイダ責任制限法施行 SNS中傷の発信者情報開示を簡便に

    2022年10月03日 16時58分

     ネット上で誹謗中傷された被害者が、加害者の情報開示請求を簡便に行えるようにする改正プロバイダ責任制限法が10月1日に施行された。開示請求にはこれまで2段階の裁判手続きが必要だったが、1回の手続き(非訟手続)で可能になる。

    改正プロパイダ責任制限法

     発信者情報の開示請求には従来、(1)コンテンツプロバイダ(SNS事業者など)への仮処分の申立て、(2)ISPへの訴訟提起――という2段階の裁判手続きが必要だった。

     改正法では、被害者が裁判所に一度申し立てるだけで、裁判所がコンテンツプロバイダ対してISPの情報も提供するよう求め、ISPに発信者情報の開示も命令できる手続きを追加する。

     また、投稿時のIPアドレスだけでなく、ログイン時のIPアドレスの開示請求も行えるようになった。

     SNSを使った誹謗中傷が社会問題になったことなどを受けた措置。改正により、開示請求にかかる時間が短縮できる見通しだ。

    https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2210/03/news130.html
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